「新年あけましておめでとうございます。」
年始のあいさつでよく耳にする言葉ですが、実はこれは重複表現なのです。
単純に「あけましておめでとう」よりも「新年」を頭に付けたほうが丁寧な感じがしますよね。
しかしそれは蛇足であり、誤用表現であるという指摘があります。
ではいったいどこが間違っているのでしょうか?
重複表現とは?
そもそも重複表現とはどういう表現なのでしょう。
他のわかりやすい重複表現を例にして考えてみましょう。
- 胃痛が痛い
- 馬から落馬する
- 元旦の朝
これらの言葉を耳にするとちょっと違和感がありますよね。
熟語の意味を表現して文章にすると以下のようになります。
- 「胃が痛い」のが痛い
- 馬から「馬から落ちる」
- 「元日の朝」の朝
このように、熟語などに含まれている意味と、同じ意味の言葉を重ねてしまうことを重複表現といいます。
新年あけましておめでとうの意味
では「新年あけましておめでとう」がなぜ重複表現なのかさっぱりわからないですよね。
それではわかりやすく、言葉を分解して意味から考えてみましょう。
- 「新年」→「新しい年」
- 「あけまして」→「一定の期間が終わり、新しい状態になる」
という意味になり、そこで「あけましておめでとう」を繋げて表現すると
「新しい年の期間が終わり、新しい状態になるのでおめでとう」
という形になります。
要約すると、
新しい年になったのに、さらに新しい状態(=新しい年)についておめでとうと言っている
ということになります。
「新年あけましておめでとう」の、「新年」と「あけまして」は同じ意味で重複した表現になるのです。
使ってしまいやすい重複表現の例
では他にもついつい使ってしまいがちな重複表現をいくつか紹介しましょう。
あとで後悔する
後悔には「あとで」の意味が含まれていますので重複表現ですね。
後悔するだけでは文章に物足りなさを感じて使ってしまうケースが多いようです。
いちばん最初
いちばんは最初であるので、とちらか1つで良いですね。
似た表現に「ダントツの1位」などがあります。
ダントツは「断然トップ」の略語なので重複ですね。
最後の追い込み
「追い込み」には「最終段階で全力を出してがんばる」という意味がありますので、最後は不要なのです
よく使ってしまうのでは追い込まれてることを強調したいからでしょうか(笑)
すべて一任する
よく耳にする表現ですが「一任する」は「すべて任せる」という意味なので、すべては不要ですね。
年内中に
これもよく聞く表現ですが「年内」は「その年のうちに」という意味なので「中」は余計なのです。
思いがけないハプニング
カタカナ言葉を組み合わせた重複表現もよくあります。
「ハプニング」は「思いがけない出来事」の意味ですので重複表現になりますね。
同じ使い方で
- 「排気ガス」
- 「製薬メーカー」
- 「ゼッケン番号」
なども重複表現なのです。
重複表現は間違いではない?
では重複表現は誤用表現で使ってはいけないのでしょうか?
そこで、ある名言を例に考えたいと思います。
「我が巨人軍は永久に不滅です」
国民栄誉賞を受賞した長嶋茂雄がプロ野球選手の現役引退時に語った名言ですね。
お気づきだとは思いますが「永久」=「不滅」となり、重複表現になっています。
しかし、この名言を重複表現で間違いだと言って非難する人は少ないでしょう。
逆に
- 「我が巨人軍は永久です」
- 「我が巨人軍は不滅です」
と正しい表現で語っていたら後世に残る名言にならなかったかもしれません。
同じ意味を繰り返し表現してしまうことは冗長で無駄かもしれませんが、決して間違いとは言い切れないのです。
そのことから考えてみると「新年明けましておめでとう」も重複表現かもしれませんが、間違いであるとは言い切れない部分があります。
「新年あけましておめでとう」も「年が明けた結果、新年になっておめでとう」と解釈しすることもできますよね。
まとめ
- 重複表現とは熟語などに含まれている意味と同じ意味の言葉を重ねてしまう表現
- 「新年」と「あけまして」は同じ意味なので重複表現
- 違和感なく使ってしまっている重複表現はたくさんある
- 重複表現は冗長で無駄だが、誤用表現ではない
- むしろ強調したいことを重複表現で表すこともある
- 「新年明けましておめでとう」は状態の変化について表現した言葉で、重複表現ではないという見解もある
「新年あけましておめでとう」は重複表現かどうかは意見が分かれるようです。
無難に「あけましておめでとう」と新年のあいさつをした方が良いですね。
しかし相手から「新年あけましておめでとう」と言われても、それは重複表現だから…と新年早々にうんちくを語るのは止めましょう。
そして最近では、LINE(メール)で新年のあいさつすることが多くなりました。
自分のなかでは
「この文章で送れば大丈夫でしょ」
ということが、意外と相手に失礼にあたる場合がわりと多いので気をつけましょう。